脱出アドベンチャーシリーズの第四研究所の失敗と動物実験との関連性の検討

初めに

この記事についてはニンテンドー3DSシリーズソフト(ダウンロード版)としてアークシステムワークスが発売、インテンスが開発を行い2012年から2016年にかけてリリースされた『脱出アドベンチャーシリーズ』の第一作目である『脱出アドベンチャー 旧校舎の少女』での作中での描写から、謎の多い今作の一部を検討した。

なお、内容の関係上(すでに一部踏み入ってしまっているが)作品のネタバレが含まれているので、理解していただきたい。

また、筆者はこれから話す分野の学問についての知識が非常に乏しいため信憑性や確証性が極めて低い信頼性のない文章であることを事前に注意してほしい。

《繭》の機能

《繭》とは、作中の第四研究所にて登場した機械のことである。この機械については続編の『脱出アドベンチャー 終焉の黒い霧』にてより詳しい情報が出るのだが、それが第五研究所のレポートより『第四研究所—— 逢魔学園の地下に隠された研究施設。 《回答者》から得た技術を元に、可能性世界の 方向性を制御する実験を行っていた。 ここで研究されていた技術は封印の代替案 ではなく、邪神そのものの存在をなかったことにしてしまうというものであった。 失敗が続き続行不能となったため、 放棄されたが、もっとも成功に近い研究とされていた。 』という第四研究所での実験内容についての記載と、『——そう、第四研究所の研究していた『繭』ではそもそも邪神の存在を消し去ることなど出来なかったのだ。今の世界では上位次元の存在であるヨミが『存在しない』という可能性は存在しない——』との記載より第四研究所の装置に求められていた機能としては、可能性世界の方向性(実現可能な世界の分岐点)を操作(邪神ヨミの存在を消去)することが目的だったと考えられる。また、可能性世界についてはさらにその後の作品である『脱出アドベンチャー 第七の予言』にてもある程度語られているが、それについては今回は比較的関連性のない部分であるため割愛させていただく。

《繭》の造りについて

《繭》は作中では、『卵のような機械。その機械にはいくつもの枝分かれしたパイプやコードが繋がっている。』とあり、さらに『微弱な振動と共に、熱を発している。』、『どうやら例の《不気味な音》は卵のような機械から出ているようだった。』ともある。また、《不気味な音》については作中では《唸る音》とも表現されている。また、赤い石を動力源とすることで動いていたことも『脱出アドベンチャー シアワセの赤い石』の秀ノ介の回想にて判明する。だが、いくつもの枝分かれしたパイプやコード、通称《枝》についての目立った記述は、第四研究所の研究員のメモより『《繭》は神の揺監(ゆりかご)である。あらゆる願望を内包した器——そして《繭》は《枝》なしには器たり得ない』とのみある。重要な箇所なはずなのにも関わらずそれ以上の情報は一切登場することがなかった。

《繭》と量子力学の関連性

第四研究所には、「シュレディンガーの猫」をモチーフにした謎解きが存在する。シュレディンガーの猫量子力学上の不確定性について示す思考実験であり、実際それをモチーフにしたような謎解きの箱や猫を動物実験に用いた記録が存在するなど少なからず研究員がその思考実験に影響を受けている節が見られる。また、実験に関するレポートについても『どこにでもいるし、どこにもいない』などの記載があるため、《繭》そのものにも量子力学の分野の理論からなる技術が用いられているのではないだろうか。

※ここから特に憶測を含んだ内容が多く含まれるため、あらかじめ理解していただきたい。

《繭》と《枝》

量子力学の概念の中で、フォノンという結晶中における格子振動の量子(準粒子)が存在する。フォノンはいわゆる音などの振動を量子力学に当てはめて考えたものであり、フォノンの持つエネルギーは格子の熱振動のエネルギーである。これによって、フォノンが《繭》を動作させるためのシステムの一端を担っていると考えたとき、熱や音の発生は動作の結果的に発生した副産物であると捉えることができる。

では、ほとんどの情報が伏せられている《枝》についてはどのような役割を担っていると考えられるのだろうか。

まず第一に《繭》の冷却が役割の可能性のひとつとして挙げられる。何故ならば第四研究所は地下深くに存在しており、地下水路に繋がる隠し通路があるほど近くに地下水が流れている。他の研究所においても須佐見家が他の二家に研究所の存在を悟られないように地下や山のトンネルの奥に位置していたが、エレベーターを用いるほど地下深くに位置しているのは第四研究所だけだ。情報の秘匿だけが目的であるなら他の研究所と比べても明らかにオーバーだ。だが、潤沢な地下水を充分に使用するためとするのであれば、比較的合点がいく。また、手動のはずの第四研究所の扉が《繭》を停止した直後に開かなくなったのが、冷却水で冷やされた研究所内外での室温の差による大きな気圧差が発生したためと仮定すれば説明できる。第四研究所に入る際には扉を手前側に引いて扉を開ける必要がある。だが、その熱を放出していた《繭》を停止した後に第四研究所内が冷却水で冷やされた空気で満たされたのであれば気圧で扉が開かないという石の持ち出しの防止も含むギミックが引き起こされても不自然ではない。概算してみると完全に密閉された室内であるという仮定をすることで現実的な値の範囲に収まった(ものの、計算に自信がないため特に物理に詳しい方がいましたら是非とも計算して確認していただきたいです)。

だが、《繭》そのものがフォノンを発生させることに赤い石の力など必要なのか。そうではなく、《枝》がフォノンを発生させて《繭》はそれの増幅とそれらを可能性世界の操作に転用していると考えれば充分赤い石の必要性がある。そのように弦楽器で表すと《繭》がアンプ、《枝》を弦として第四研究所を弦楽器と見立てることで今までは原因不明で起きたように思えた《繭》の動物実験での失敗にもまた別の見方ができる。

弦楽器と黒猫

そもそも、第四研究所の研究レポートにおいて動物実験はある意味で成功だったが実験の結果を研究員達も知覚できていなかったとの旨の記載がある。もしそうなのであれば、何が原因でその失敗を知覚できたのか。それは、時系列から考えて黒猫を動物実験に使用したことが起点のひとつだと考えられる。レポートには動物実験に以前黒猫を使用したという研究員の発言がある。だが、実際に調べてみると実験体の資料はなにひとつ見つかっていない。このことから《繭》が黒猫の資料などに関する存在そのものは抹消できたが、研究員たちの記憶からは完全には抹消されなかってと推測できる。この失敗は、実験体が黒猫であることが原因ということはないだろうか。猫は弦楽器の中でも三味線の皮として用いられることが多々ある。だが、その中でも黒猫は加工がしにくいとされ格の低い素材として扱われる。もしそのような概念的な原因でその黒猫の加工(黒猫の存在の消去)が不完全なものであったとしたらどうであろうか。その場合、実験の失敗が露呈したのは黒猫を動物実験に使用したことが理由であるとしてもあまり齟齬はない。《唸る音》とも評されるような音が出るのも、動物実験に黒猫を利用し《繭》と《枝》の弦楽器としての状態が悪化したためと考えれば辻褄が合うのではないだろうか。そしてその後の稼働においても、対象の存在の不完全な消去という黒猫と同様の不具合が発生し旧校舎の少女が誕生してしまったのではないだろうか。

最後に

この考察については正直、脈絡のないところが散見しています。筆者の見聞の浅さも相まってあまり説得力のある文章ではなく、ネタ考察に近いものとなってしまいました。その他の謎についての説得力を持たせるための文章になってしまい、文章自体の説得力が非常に低いものになってしまったことについては反省したいです。いつかこれらの謎へ近づく方が出てくることを心より望んでおります。また、この文章についての批評や感想などがありましたら、是非ともお聞きしたいです。ここまでこの駄文を読んでくれたみなさま、本当にありがとうございました。

 

追記(2023/2/3)

この記事にはいくつかの齟齬や明瞭じゃない点があるので以下に記します

フォノンという概念の示唆が作中に一切見られなかった点

・気圧差に関して筆者は物理学に疎いため現実的な結果が出たと上にあるがその計算結果が正しくない可能性が高い

・≪枝≫に関して、冷却水のやり取りのみに使われた管の名称である可能性は低いため、上とは違って装置の中でも重要な役割を担っていた可能性